1947年の独立、1991年の経済自由化と、インド社会には大きなターニングポイントがあった。グローバル化が徐々に進む過程で、欧米の美術マーケット・アートシーンにおいてもインドのアートは価値を生成していった。

アートシーンには様々なプレーヤーがいる。
美術館、ギャラリー、オークション、コレクター、キュレーター、そして、アーティスト。豊かなシーンの育成には、鑑賞者・美術愛好家も必須だ。現代アートの世界では「芸術」という学問により、価値のルールは作られている。つまりは、近代西洋美術史において重要な位置付けであるかどうか。

国内アーティストを育て、国際マーケットへの先導役となったVADEHRA ART GALLERYと、訪れた際に行われていた展示を紹介したい。

VADEHRA ART GALLERY

Address
D-40 Defence Colony, New Delhi 110024
+91 11 24622545 / 24615368

VADEHRA CONTEMPORARY

Address
D-53 Defence Colony, New Delhi 110024
+ 91 11 46103550 / 46103551 / 65474005

月曜〜土曜 11:00am – 7:00pm
http://www.vadehraart.com/

ギャラリー巡りの2軒目は「VADEHRA ART GALLERY 」へ。
1987年にアルン・バデーラ氏/Arun Vadehraが創設した老舗のアートギャラリーだ。モダンアートとコンテンポラリーアートを扱う2つのギャラリーと、アート関連の本屋が併設されている。

ギャラリーと歴史を共にし、取締役をつとめるソニア・バラニー女史/Sonia Ballaneyに話を聞くことができた。

「アルン氏は、タージグループの内装を請負うインテリアの施工業者でした。でも、彼はアートに情熱があって1987年にこのギャラリーを始めました。」「展覧会をしたけれど、1つも絵が売れなかった時はギャラリーが各作家の作品を1点ずつ買っていた。1989年頃のことです。」

当時はまだ、全くと言っていいほどインドにアートの市場がなかったという。オーナーと当時無名のアーティストたちは「同士」として友情で繋がっていく。

当時、既に評価が確立していたアーティストたちもアルン氏に協力した。
ムンバイのプログレッシブ・アーティストグループ/Bombay Progressive Artists’ Group(M.F.フセイン/M.F. Hussain、ラン・クマール/Ram Kumar、ラマ・チャンドラン/A Ramachandran、ティエブ・メータ/Tyeb Mehta)の巨匠たちだ。

1993年に転機が来た。「それまで国立近代美術館/National Gallery of Modern Art(NGMA)では存命のアーティストの作品を展示をしたことがなかった。それが1993年に初めてインドで生きている現代アーティストによっての展覧会を企画することができたのです。」

そして1995年にロンドンのオークションに、VADEHRA ART GALLERY はインドのアートギャラリーとしては初めての参加を果たす。(*1)こうしてアーティスト達と切り開いてきた道は、インドの現代アートシーンそのものを見ているようだ。

現在、アーティストや教育活動の支援、出版事業、プライベートギャラリーと美術館の連携プログラムなどを行い、インド美術界の活性化のため様々な役割を果たす、存在感のあるギャラリーとなっている。

評価が確立されたアーティスト達の作品展の企画と(VADEHRA ART GALLERY)、それに加え新進気鋭アーティストの発掘(VADEHRA CONTEMPORARY)を行う。アートファンなら必ず訪れたいギャラリーの1つだ。

取扱アーティスト
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【展示作品の紹介】
Paramjit Singh | Paintings and Drawings
ギャラリーステートメントより抄訳
シンのブラシは神秘的なランドスケープを描いている。
厚い顔料で覆われたペイントはすべての自然な形がカラフルで触覚的な存在を与えられている。フレームの中では空と水のぼんやりとした領域も触感で表現されている。草、葉、花をエッチングしている線は、不思議で詩的な音楽に憑依されているようだ。

印象派、ポスト印象派、それにドイツ表現主義によって光が描かれた方法に惹かれ、19世紀のフランスの画家の影響を受けている。彼の言葉によれば「重要なのはランドスケープの概念です。私は自然を描く画家であり、イラストレーターではありません。空気とテクスチャのような状態やもっと古い要素を描きます。私は自然を使って、私のランドスケープを発明します。」

【アーティスト】
パランジット・シン/PARAMJIT SINGH
インド、アムリトサル出身、デリー在住の画家。

注釈
(*1)ティエブ・メータ/Tyeb Mehta(1925–2009)は、国際市場で急進的な評価を得たインドの現代アートの最も分かりやすい例だ。 彼の絵画は1995年にクリスティーズとサザビーズのオークションで最初に出品されたとき、平均して4,000ドルから13,000ドルの間の価格だった。2000年、ティエブの作品は50,000ドルを超え、2002年9月19日クリスティーズ・ニューヨークで『Celebration』と名付けられた三部作は300,000ドルのインド人現代アーティストの最高価格を記録した。
欧米からの投資家たちが一斉に入ったことによりインドのモダンアートの価格高騰(2004 -2008)につながったが、2009年の金融危機によりブームは沈着し、現在はインド国内アート愛好家やコレクターが中心のマーケットとなってきている。
参考サイト Artprice Art @ Law

デリーでインドの現代アートに触れる。【1】
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