インドに住んでいて気になるのは、みんながふだん食べているごはんのこと。

たまたま食事どきになって、おうちでのごはんをすすめられたり。

ちょっと用があってお邪魔すると、チャイやコーヒーと一緒に軽食をいただいたり。

ついつい食べもののことを、根ほり葉ほり聞いて、ごはん食べにおいでよということになったり。

そんなことになりますように、と願っているようなところがあります。

インドはそれぞれの地方の特色が強いうえに、宗教、カーストという身分制度、経済状況などが複雑に入りまじって、カラフルなマーブルケーキみたいになっている。

どこをどう切り取るかによって、見える世界も食べているものも違ってくる。

ふだん食べているものを教えてもらうということは、その人の生きてきた背景を、ほんのちょっとだけのぞかせてもらうようなことなのかもしれない。

「教えてインドのお母さん」では、インドの雰囲気ごと伝わるように、なるべくお母さんから教わったそのままのレシピを載せることにしている。

日本では用意しにくい材料もあるけれど、レシピに想像力をのせて、インドの台所から立ちのぼる香りをくんくん嗅ぎとってもらえたらいいな。

東インドに位置するオリッサ州は、コルカタがある西ベンガル州、そして南インド区分のアーンドラプラデーシュ州ととなり同士だ。

マスタードオイルやマスタードシードを多くつかうベンガル料理と、チリの辛さと多めの油が特徴的なアーンドラ料理という個性派2州にはさまれている。

そんなオリッサの料理は、個性が強い兄弟にはさまれた、おっとり次男坊のようなおだやかさがある。

ベンガル湾の海の恵みをうけた、緑豊かなオリッサ州の、食材の味を活かした手の込みすぎていない料理は、日本の食卓にならんでいてもムリなく同居しそうな雰囲気すらある。

今回私が教えてもらったのは、インド政府公認の日本人オディッシー(オリッシー)ダンサーとして世界的に活躍する小野雅子さんの、義理のお母さん。

州都ブバネシュワールのダンススタジオ兼ご自宅では、ふだんからいろいろな国の人たちが出入りしていて、お母さんの作ってくれたごはんに舌鼓をうつのだろう。うらやましい。

みんなに料理を作り続けてきた、お母さんの慣れた手つきはひらりひらりとうつくしく、次から次へと料理が仕上がっていく。

たっぷりの新鮮な野菜にパンチプタナ/panch phutanaという、ベンガル料理でもよく使うパンチホロンと同じミックススパイスを使い、ターメリックと塩を加えてさまざまな野菜を炒めていく。ときには生姜とニンニクのペーストを加えたり、ヨーグルトを加えたものもある。

新鮮な魚を使ったシンプルなフライもフィッシュカレーも、すべて食材の味を活かした味つけになっている。

コロコロした音が心地いい、地元オリヤー語を話すお母さんから、目と舌で教わった料理3品をご紹介します。

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1. Dahi Baigan 炒めナスのヨーグルト和え
2. Karela Aloo Bhaja ゴーヤとジャガイモの炒め物
3. Machha Bhaja シンプル魚のフライ

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Recipes
1. Dahi Baigan 炒めナスのヨーグルト和え

材料
緑ナス 3本(普通のナスでもOK)
ターメリック 小さじ1/2
塩 小さじ1/2

ダヒ(ヨーグルト) 2カップ
カレーリーフ(葉の部分のみ)1/2カップ
※パンチプタナ/patch phutana 大さじ1
油(ここではサンオイル) 大さじ2
チリパウダー 小さじ1/2
クミンパウダー 小さじ1/2
塩 小さじ1

つくり方
①ナスを縦くし切りにして、ターメリックと塩で下味をつけて30分くらいおく。
②ヨーグルトをボールに移しておく。
③フライパンに油を入れて温め、パンチプタナを入れて中火、カレーリーフを加える。
④油のみフライパンに残し、用意してあったヨーグルトに③のパンチプタナとカレーリーフ、チリパウダーとクミンパウダーを入れ混ぜておく。
⑤フライパンに残っている油で、ナスを焼く。フタをして、蒸し焼きにし、火が完全に通ったら、フタをとり、ナスを潰し気味にヘラで押さえつけながら、両面しっかり焼き色をつける。
⑥火を止め、ナスを皿に移し冷めるまで待ち、冷めてから先ほどのヨーグルトにナスを加えて、ざっくりとかき混ぜる。塩(分量外)で味を整える。

パンチプタナ/patch phutana
コルカタを中心にしたベンガル料理でよくつかわれるパンチホロンと一緒のミックススパイス。
基本は、クミン、フェンネル、ブラウンマスタード、ニゲラ(カロンジ)、フェネグリーク同量ずつを混ぜて作られる。
火が通りにくいフェネグリークが入っているので、しっかりと火を通すことが旨みを引きだすポイントになる。

※パンチプタナのつくり方
クミン、フェンネル、ブラウンマスタード、ニゲラ、フェネグリーク(すべてホールスパイス)を同量ずつ混ぜて、冷暗所で保存する。

2. Karela Aloo Bhaja ゴーヤとジャガイモの炒め物

材料
ゴーヤ 2本
玉ねぎ 1個
ジャガイモ 3個
パンチプタナ/panch phutana  大さじ1
油(ここではサンフラワーオイル)大さじ2
ターメリック 小さじ1
塩 小さじ1
追い油(少々)

つくり方
①ゴーヤを種つきのまま、薄くスライスする。ジャガイモは皮をむいて半月切り。玉ねぎは薄くスライスする。
②フライパンに油を温め、パンチプタナを入れて、しっかり火を通す。
③野菜を全て加えて、中火で炒める。
④③にターメリックと塩を加える。
⑤よく炒めてからふたをする。
⑥10分くらいしてからふたをとり、油をお好みで足して、焼き色をつけて出来上がり。

ゴーヤを種つきのまま料理する。苦いけれど、種がカリッとアクセントにもなるので、ぜひ試してみてほしい。

3. Machha Bhaja シンプル魚のフライ

材料
Rohu/Catla(鯉科の魚)厚切り8切れ
ターメリック 小さじ1
塩 小さじ1(お好み)
油 大さじ3
クミン 小さじ1
レモン(お好み)

つくり方
①魚にターメリックと塩をまぶして、30分くらいおく。
②フライパンに中火で油を温め、クミンを入れ、茶色く色が変わり、香りがたってきたら、魚を入れる。ふたをして、蒸し焼きにする。
③火が通ったら、ふたをとって、裏返し、おいしそうな焼き色がつくように両面しっかり焼きつける。お好みでレモンを添える。

この魚のフライ、ポカロ/Pakhalaと一緒に食べることも多い。

ポカロとは、オリッサ州の伝統食でもある、冷やご飯に水をかけて食べる、オリッサ版お茶漬けのようなもの。

ただ、冷やご飯に水をかけてライムやチリ、生タマネギを添えて食べるタイプや、カードを加えるタイプ、一晩置いて発酵させてから食べるタイプがある。

オリッサのお母さんも、暑い中汗をふきふき教えてくださったあと、ご飯に水をかけて、青チリをかじりながら、さかなのフライと他のおかずとともに食していた。

その様子を見ながら、秋田の両親が、暑くて食欲がない夏の日に、冷やご飯に氷水をかけて、焼き鮭や納豆、漬物などと一緒に食べることを思い出した。

これは、山形や秋田でいう水かけ飯という食べ物。オリッサのお母さんと実家の風景が重なる。

オリッサ伝統料理のレストランで食べた、ポカロは、冷やご飯に水と少しカード(ヨーグルト)を加えたものに、カリカリのクミンとカレーリーフ、チリがのっていた。

思ったより食べやすく、暑い日にはさっぱりしていいかもしれない。

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オリッサで出会った人たちの印象は、オリッサ料理と重なるようなところがある。

それは、お兄さんの首都コルカタでも、弟の首都ハイデラバードでも感じることがなかった(あっ、個人差あります)、無垢な純朴さでもある。

日本からの旅行者は、どうしても引力が強いバラナシやアグラーなどに惹きつけられてしまうかもしれないし、南インドも要所がいろいろあるから、ついついオリッサ州を素通りしてしまうかもしれない。

それではあまりにももったいない。

もし、コルカタから入って、オリッサ州、アーンドラプラデーシュ州とたどって、チェンナイから出ていくような旅ができたら、食の変化を舌と肌で直に感じることができて、おもしろいことになると思う。

そしてできればオリッサでは、地元の家庭料理を食べられる機会に恵まれたらいいな。

写真・文=やましたのぶこ (spice+arts)