バンガロールから西へ西へと寝台バスで7時間、西ガーツ山脈の山なみを背中のがたつきで感じながら、もうすぐ夜が明けるマンガロールの街へとたどり着く。

モンスーンシーズンのマンガロールの朝。今回教えてもらったお母さんの家からのながめ

アラビア海に面したこの港街には、水という意味のトゥルということばを話すトゥルバ族、コンカニ語を話すヒンドゥー教の人たち、かつてポルトガルの支配下にあったゴアからきたクリスチャン、そして、海の向こうのアラビア半島から渡ってきたムスリムの人たちなどが暮らしている。

それぞれのコミュニティの日々のごはんと、ジロリのぞき見るちがうコミュニティの気になるごはんとが時間をかけてくっついていき、そのうちに尾ひれをつけてヒラヒラと豊かな食の世界がつくられていったんじゃないのかなと、ソーゾーする。

バンガロールの食べもの屋のメニューでも、マンガロール風の、といえばフランス風の、地中海風のといったような、おいしいごはんの代名詞のような使われかたをしているのを見かける。

朝早くからすみませんと、バスを降りてうかがったのは、今回料理を教えてもらうお母さんのお宅。マンガロールの名前の由来とされる、マンガラデヴィ女神がまつられているヒンドゥー寺院のすぐ近くにある。

まだバスの揺れがつづくからだで、チャイをいただいていると、家の前を大声で何かさけぶ声がする。なんですか?とたずねると、移動式魚屋だとお母さん。それは見たい!と、あわてて外にかけだす。

見たことのない模様のカニや日本でもなじみのアジやカレイ、イシモチなどがたっぷりとれたて、ぴかぴかして売られている。ふだん内陸に住んでいて魚といえば、川(決してきれいじゃない)や湖(まったくきれいじゃない)でとれた淡水魚が多いので、ひさしぶりに見る活きのいい海の魚がまぶしい。

イシモチはカレーに、カニとサバはマサラ炒めにしましょうかねとお母さん。マンガロールでは、魚料理を教わりたいと思っていたので、うれしくて顔がにやける。

今回は、このお母さんのお宅に泊まらせてもらったので、台所に入りびたり、お母さんのムダのない流れるような立ち居振る舞いに見とれながらも、ちょっと失礼しますと質問をしたり、写真をとったり、作業の手をさえぎりながら教わってきた。

***********

1. Mangalorean Fish Curry  マンガロール風魚のカレー
2. Neer Dosa  ニールドサ/お米で作るうすいクレープ
3. Green Chutney  グリーンチャトニー/たっぷりココナッツとミントで作るノンオイルディップ

***********

Recipes

1.  Mangalorean Fish Curry  マンガロール風魚のカレー

材料
イシモチ小6匹
【スパイスペースト】
けずったココナッツの果肉 大さじ3
コリアンダーシード 大さじ1
クミンシード 大さじ1
フェネグリーク 1つまみ
ドライチリ お好み(ここでは、色づけのための辛くないチリ2本、辛みのためのチリ2本使用)
ターメリック 大さじ1/2
水 1カップ
玉ねぎ 中1個
にんにく 4片

=======

しょうが 1片
玉ねぎ  中1/2個
青チリ 1本
カレーリーフ 7まい
油 大さじ2
ローマンゴー(青いマンゴー)小1/2個
水 1カップ
塩 大1

下準備
① イシモチを洗い、ウロコとヒレ、腹ワタをとり、流水できれいに洗い流す。
② 塩を振り(分量外)30分くらいおく。

つくり方

① フライパンでココナッツを強火でいため(油なし)、少し水分を飛ばしたら、火からおろす。
② はじめにスパイスペーストを作る。フライパンでコリアンダーシード、クミンシード、フェネグリーク、チリを香りがたつまで炒める(油なし)。火からおろし、冷ます。
③ ①と②にターメリック、水を加えてミキサーにかける。
④ ざく切りした玉ねぎ、にんにくを軽く炒め(油なし)③に加えスムーズになるまでミキサーにかける。途中水分が足りなければ水を少し足す。スパイスペースト完成。
⑤ 厚手の深いなべに油を入れ、スライスした玉ねぎ、しょうが、青チリ、カレーリーフを入れ炒め、香りがしてきたら、④のスパイスぺーストを入れる。
⑥ ローマンゴーの皮をむき、柵切りして、⑤に入れ、水と塩を入れて強火、フタをする。
⑦ 煮立ったら、魚を入れてフタをし、弱中火で煮ていく。途中魚が煮くずれないように、静かにかきまぜる。
⑧ 20分くらい煮たら、できあがり。

*酸味とココナッツが特徴のこのカレー。酸味づけのローマンゴーがない場合はトマト、タマリンドで代用することができる。

2. Neer Dosa  ニールドサ/米から作るうすいクレープ

材料
米(ここではSonamasuriというインド米を使用) 1カップ
水 2カップ
塩 小さじ1〜お好み

つくり方

① 米をよく洗い、小石があったら取り除く。
② 1−2時間〜一晩、たっぷりの水にひたす。
③ 水をすて、塩、水少々(分量外)を加えてミキサーにかける。
④ ③に水を加え、サラサラの生地をつくる。(サラサラにならない場合はさらに水を加える)
⑤ フライパンに油をうすくひいて、生地を入れ、フライパンを傾けてうすくのばすようにし、フタをする。
⑥ 1〜2分で火が通ったら半分に折りたたみ、さらに半分に折りたたんで1/4円サイズにする。
⑦ あつあつをいただく。

*火は一貫して中強火にするとやわらかく仕上がる。
*つねに生地を下からかき混ぜてサラサラな状態を保つ。
*クレープ状のニールドサに、砂糖、ココナッツフレーク、カルダモンパウダーを少々入れ、春巻きのように巻いて食べてもおいしい。

3. Green Chutney  グリーンチャトニー/たっぷりココナッツとミントで作るノンオイルディップ

材料
チャナ豆(挽き割りひよこ豆) 大さじ1
青チリ 2本
にんにく 2片
玉ねぎ 小1/4個
けずったココナッツの果肉 1と1/2カップ
カレーリーフ 30枚
コリアンダー 1カップ
ミント  1カップ
ローマンゴー(青いマンゴー) 小1/2個
水 少々

つくり方
① チャナ豆を弱火で火が通るまでよく煎り、冷ましておく。
② 青チリをみじん切り、ニンニク、玉ねぎをうす切りにし、深めのフライパンでカレーリーフと①と一緒に炒め、ココナッツを加えさらに炒める(油なし)。
③ ざく切りしたコリアンダーとミントを軽く匂いを飛ばすように炒める(油なし)。
④ ローマンゴーの皮をむき、ざく切りにしたもの一緒に全てをミキサーにかける。水分が足りなかったら、水を加える。できあがり。

*酸味がもっとほしかったら、マンゴーを増やす。
*アームチュールパウダー(ローマンゴーのパウダー)での代用もOK。

どこの街でも、市場にはぜったい行きたい。マンガロールでも野菜や果物が豊富なセントラルマーケットへとでかける。

こういうところで、めずらしい食材と出会うと、店のひとになまえや食べかたをすぐ聞きたくなる。そうすると、大抵それを聞いていたまわりの人たちやお客たちが、えっ?なになに?どうしたどうした?と話しはじめる。そうして思いがけずおいしい料理の作りかたや、おかしな話しが聞けたりする。

インドの人たちは、こういう余白みたいなことを見すごさないで、その余白にさまざまな色を塗りかさねていこうとする。このカラフルなやりとりがいいんだな。

今回もそんな風にして、見なれないほうれん草のような野菜を店のひとに聞いていると、それを見ていた女性が「これはね、ココナッツの果肉をけずったものと塩少しと一緒に油、ココナッツオイルが一番いいわ。そうして炒めるだけで、とてもおいしいのよ」と流暢な英語で教えてくれた。わたしはいつもこんなことを待っている。

まだまだ教わります。まだまだ食べます。後編へとつづく。

 

写真=やましたのぶこ/Chaitali Raizada(Taantraa Organic Handbaking
文=やましたのぶこ(spice+arts)