ムドラーファウンデーション インタビュー1

アートを通して、モチベーション、インスピレーション、喜びを共有したい。世界中のアーティストと一緒に、オリッサの社会的に弱いコミュニティを訪れダンス・アートワークショップを開催しているムドラーファウンデーション。NPOの活動と設立の経緯について聞いた。

オリッサ州ブバネシュワール在住のオディッシーダンサー小野雅子さんは、ダンサーでありMOPA(Masako Ono Performing Arts)を主宰をする傍ら、全ての人々にアートを、というコンセプトのもとNPO(非営利団体) ムドラーファウンデーション/Mudra Foundationをフォトグラファー・舞台照明デザイナーである夫のマナスさんと共に運営している。

ブバネシュワールの空港からほど近く、列車の汽笛もすぐ近くに聞こえる住宅街。ダンススタジオ兼ムドラーファウンデーションの活動拠点のご自宅を訪問して、小野雅子さんにお話を聞いた。

NPO設立の経緯
はじまりは、小野雅子さんがオディッシーダンサーとして世界中で公演する中で、知り合った人やダンサーの友人達がオリッサに訪ねてくるようになったことだという。

2006年からブバネシュワールにて、オディッシーダンスとヨガを教え始めた雅子さんの元に、オリッサを地元とする生徒達だけでなく、海外からも色々なジャンルのダンサー達(例えば日本、イタリアやフランスなどのヨーロッパから、ヒップホップ、フラメンコ、コンテンポラリー等のダンサー)が1ヶ月やそれ以上の泊まり込みでやって来た。初心者というよりは、ダンスを教えているような先生が多かったという。

「地元オリッサの若い人に、色々なジャンルのダンスを広げてもらえたらと思った。」と雅子さん。
世界中で親しまれている様々なダンスに触れることは、オリッサに住む若者にとっては稀有な機会であった。はじめは自分の生徒から、そして恵まれないコミュニティへと、ダンスという芸術の素晴らしさを分かち合う活動を広げた。

ブバネシュワールを州都とするオリッサ州は、インドの中でも州人口あたりの貧困比率が高い。(*1) 子供たちがダンスを習いたいと思ったとしても、家になかなかその余裕はないだろう。

インド古典舞踊家、オディッシーダンサーとして、インドやオリッサに対して何か還元できないかという思いを持っていた雅子さんは、こうして世界中の様々なジャンルの友人達とコラボレーションしてワークショップの活動を始めた。

ムドラーファウンデーションの活動と目的
公式ページより引用
”MUDRA FOUNDATIONのはじまりは、ダンスの美しさを共有することから始まりました。以来、ダンス以外の他のアートにも範囲を広げています。ムドラーファウンデーションの目標は、アートを通して、社会的に不利な状況にある地域社会の人々に、モチベーション、インスピレーション、喜びを提供することです。 ダンス/アートワークショップを開催し、世界中のアーティストと一緒に、オディシャの社会的に弱いコミュニティを訪れます。2006年より活動開始、2009年からは非営利団体のムドラーファウンデーションとして活動を続けています。”

「オリッサはほのぼのしてるから、アートは育つと思うんですね。オディッシーダンスもやってみないと分からないと思うんですが、新鋭なんですよ。柔軟性ももちろん必要ですが、技術はものすごい繊細でディテールまでかっちりやっている。それはオリッサの発祥のものであるので、(オリッサの人々の)アーティスティックなものを生み出す才能はすごいあると思っていて。」

素朴な田舎というだけでないオリッサの魅力。ここの人々はもともと創造する事にも長けている、と雅子さんはいう。それに彼女自身がつくることの楽しみやアートのもつ力を信じている。

Photo by Mudra Foundation
近年はオディッシーダンスに限らずコンテンポラリーの分野でも世界的に活躍している。ストックホルムのコンサートハウスで行われた公演の様子。

「私がいつも思うのは、アートって大切だな、と。例えば私だったらヨガをやったり、ダンスクラスをしたり、服をデザインしたり。(夢中になって)なんかやっているときって、お金いらないじゃないですか。そういうクリエイトする文化、つくる楽しみみたいなものがあったらいいんじゃないかな。」

社会的に弱い立場のコミュニティで、もし大変な状況にあったとしても、クリエイトすることの喜びを知ってほしい。芸術にふれてほしい。アートを楽しむ権利は誰にでもある。全ての人にアートを、という言葉にはそういう思いが込められている。

活動をはじめた頃は、善意で送られてきた寄贈品を孤児院や施設に届けに行くなど、慈善活動の面が強かったというが、そちらの仕事はできれば政府に任せて、アートをシェアするという活動をメインにしていきたい、との方向だ。現在ではオディシャビエンナーレの際に、弱い立場にあるコミュニティの子供達を招待したり、アーティストと共に村に行ってワークショップを行っている。

ムドラーファウンデーションの活動として、現在進行形のプロジェクトを紹介したい。インタビューではそれぞれのプロジェクトについて詳しく話を聞いていく。

1. 伝統工芸の真鍮アート、ドクラのプロデュース
ドクラを特集したフォトブック『LOST into Art : DHOKRA』を制作、2017年3月に発行した。
継続して、デザイナーと職人とのコラボレーションを主導する予定だ。

2. オディシャビエンナーレ 2017
ムドラーファウンデーションは2012年にプレイベント、2013年より奇数年度に、総合芸術祭オディシャビエンナーレを主催している。
今年の2017年には第3回目のオディシャビエンナーレを開催する。

文=小林洋子
写真=ムドラーファウンデーション

関連データ
(*1)2013 貧困率 インド全土 21.92% オリッサ州 32.59% インドの全州の中で6番目に低い。
インド政府が定めた食料消費を中心に最低水準の生活を維持するために必要なコストをもとに算出される。
Source : Number and Percentage of Population Below Poverty Line

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