ダイナミックに変容している社会があれば、それを映す鏡としてのアートがある。インドのアーティスト達ははどんな表現を生み出しているのだろうか?まずは首都のデリーから面白いギャラリーを巡ってみたい。

インド人写真家、Bharat Sikkaの展示『Where the Flowers Still Grow』が行われていた。

今回の取材では、インドの現代アートに注目してみる。
アートの中心地である首都デリーのギャラリーは、インドの現代アーティストが国際舞台に躍り出る仕掛け人としての役割を果たしていた。ギャラリーとそこで見た作品を紹介する。

NATURE MORTE

Address
A-1, Neeti Bagh, New Delhi, 110049
+91 11 40687117
月曜〜土曜 10:00am – 6:00pm
http://naturemorte.com/

1982年から1988年までNYのイーストビレッジにて、ピーター・ナギ氏/Peter Nagyにより運営されていたギャラリー「Nature Morte」は、1997年ニューデリーに場所を移して復活した。南デリーの落ち着いた高級住宅街の表通りに面した一軒家のギャラリー。2003年より今の場所に位置している。

コマーシャルギャラリーとして、コンセプチュアルアート、フォトグラフィー、映像、スカルプチャー、インスタレーションなど、実験的なジャンルの芸術を扱う。

インドの現代アートの出現とともに国際アートマーケットに存在するギャラリーであることから、急成長を続けるインドのコンテンポラリーアートシーンを象徴する存在だ。新しいインドの芸術の息吹はここからまず感じられるだろう。

取扱アーティスト
Subodh Gupta / Bharti Kher / Thukral & Tagra / Jitish Kallat / ほか(リストはこちら

【展示作品の紹介】
『Where the Flowers Still Grow』
ギャラリーステートメントより抄訳
インドにとって神話的で心の拠り所であったカシミール州。
世界でも有数の美しい山々と渓谷で知られるこの地の名前は、1980年代後半から政治または宗派間の紛争地と同義となっている。(*1)

この『Where the Flowers Still Grow』の展示は、諍いを何も知らない自然の壮大な風景の中で、若いカシミール人男性を撮ったポートレート写真で大部分を構成されている。
青年がカメラを見つめる視線の先に答えはあるのだろうか?

バーラット・シッカは、カシミール人の肖像を雄大で美しい風景と一緒に記録した。それにシッカがカシミールを訪問した際の、彼自身による細かな描写 – 家屋だけでなく死んだ動物や放棄された建物、自然の要素を捉えたもの – を加えている。

このようなディテールの描写によってシッカのプロジェクト(物語)は演出される。そしてそれは、地域やその住民に対する微妙なニュアンスでの解釈をはっきり示している。最後に受け取るのはカシミール訪問時のシッカの感情的な反応と、残存証拠、そして歴史の痙攣に対する沈黙の証言だ。

【アーティスト】
Bharat SikkaArtist Websiteはこちら
インド出身のバーラット・シッカ/Bharat Sikkaは、写真家として働いたのち、NYのパーソンズ美術大学を卒業、ファインアートとしての写真のアプローチを確立する。ヨーロッパとインドを拠点とし、The New Yorker, Vogue, i-D, GQ, Time Magazineなどの雑誌で一流のファッションフォトグラファーとしても活動している。

現代インドを視覚する「ENVIRONMENTAL PORTRAITS (環境的なポートレート)」「URBAN LANDSCAPES(アーバン・ランドスケープ)」、 それに彼の家族を被写体とする個人的なプロジェクトをポートフォリオとして記録している。ファインアートの分野において彼はインド亜大陸の色と精神性を表現できる数少ない写真家といわれている。

アメリカ人のオーナーがインドの現代アートにインスパイアされ、Nature Morteがデリーに移ってから約20年。世界で主要な国際アートフェアに参加しているこのギャラリーは沢山の現代アーティスト達を世界に送り出している。

対応してくれたギャラリーマネージャーのサンジャナさん。彼女はシンガポールでアートを勉強し、インドに帰ってきてからここで働いているという。アートイベントのことを聞くと「2018年、キュレーターにアニータ・デューベ/Anita Dubeが選ばれたケララのコーチ=ムジリス・ビエンナーレはきっと面白いと思います。」など、インドのアート事情も色々と気さくに教えてくれた。

多様性を体現した多民族国家であるだけに、個性的で強い表現の作品や、政治的・社会的メッセージを内包した作品に多く出会えるのも、インドの現代アートの特徴だ。

注釈
(*1)カシミール渓谷はインドとパキスタンの対立が絶えない係争地である。背景にはイスラム教とヒンドゥー教の宗教的な対立がある。

デリーでインドの現代アートに触れる。【1】
デリーでインドの現代アートに触れる。【2】
デリーでインドの現代アートに触れる。【3】

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