日本人が立ち上げ、インド布手織産業の持続的発展に大きく寄与しているブランドがある。実際にどんな方法でモノづくりをしているのか。手仕事が生きる村を訪れ、その土地の伝統を大切にビジネス/持続するしくみをプロデュースしている。

ある日の午後、キヤリコ、アトリエオープンディ/CALICO : the Atelier OPEN DAY を訪れた。デリーの閑静な住宅街にある隠れ家のようなアトリエで、CALICOを主宰する小林史恵さんが迎えてくれた。

インド伝統の価値ある美しい布、手仕事を守る村を実際に巡っては惜しみなく情報発信をされているCALICOのFacebook PageInstagramをフォローしているいち読者として、念願叶っての訪問だ。

CALICO : the ART of INDIAN VILLAGE FABRICSとは「インドの手織産業の持続的発展を支援する活動」だ。公式ページ ABOUT USのステートメントにあるように、一般的なファッションブランドとは一線を画す主旨で運営されている。

温もりのある手織り布で作られたナチュラルな雰囲気の洋服が並ぶ、アトリエ内。
肌触りの良さそうなやわらかいストール、繊細な織りが施された芸術品のような加工。目を凝らして手にとってみたくなるアイテムばかりだ。

希少な伝統技術。ジャムダニ織の仕上がりは繊細で美しく、見惚れてしまうほどのクオリティ。
完璧でないこと

アトリエ内を見せてもらいながら、興味を持った生地について質問していくと、史恵さんがひとつひとつのプロダクトを大切に作っていることがわかる。

生産している村での作り手とのストーリーを教えてくれた。
例えば、先染めの糸を織り込んだ縞織りのパターンの布を見つけたのは、村を訪れた際だ。
縞織りの幅が均一でなかったから意とする商品にならなかったのだろう。イタリアのデザイナーの注文した布が、屋外に棄てられていたという。その後、グレーの濃淡が美しい丹精を込めて織られた綿の手織り生地は、CALICOの商品として生まれ変わる。DDG ディフェクテッドダークグレー/「却下された墨黒」というデザイン名となり、均一でない幅、モノトーンを生かしたシリーズができた。

また、CALICOの人気商品に、薄手の白いカディ生地に、ムガルの幾何学的なパターンを白インクのブロックプリントで施したワンピースがあった。模様が光に透けて見えるように布を使ったデザインは、機械にはできない手作り感が溢れている。ブロックプリントの布を使った商品はインド国内のショップでも多く見かけるけれど、ここではさらにその布の面白さが引き立っている。

これは、現代の私たちが逆に「失敗した、ずれた」ものに手作りの良さや温かみを感じることに対し、CALICOが企画したテキスタイルのデザインだ。この制作過程で、手彫りの模様を掘った版木のブロックを押していく職人さんに、そのブロックプリントをぼかすよう頼んだという。わざと間を開け均等にしないといったことや、三度に一度だけインクをつけるようにして、あえてかすれ具合を出す。ブロックプリントの職人達は、もっと上手に僕たちはできるけれどね。と言っていたそうだ。彼女の言う「完璧でないこと、インパーフェクション/Imperfection」を生かす考え方が、面白い。

あえて少しだけ均等でないブロックプリントを施したカディ生地のストール。
ジャムダニ織りの柄が入ったスカート。着心地がさらっとしていて肌によく馴染む。
持続するしくみをデザインする

そんな風にして、実際に手仕事をする職人の伝統技術と現代の感覚を重ね合わせて、CALICOのプロデュースする商品が出来上がる。それは元々やっている手作業の仕事をリスペクトしながら、少しづつエッセンスを加えていくこと。史恵さんは「服をデザインするというより、ビジネスをデザインするという発想」だという。

ここでいうビジネスとは「持続するしくみ」を作ることだ。農村で手仕事を生業としている職人たちと共に、受け継がれて来た手法を守っていく。以前は大手コンサルティングファームに勤めていた史恵さん。自分の情熱を傾ける仕事を改めて考えたとき、一番可能性があると感じたインドの手織り布で、CALICOを立ち上げた。

極力、無駄なロスがでないように。検品でハネられた服は丁寧になおし、稀に日本でエラーが見つかった場合にでも、展示会でのスタッフの服に使うなどして対処する。「手織りの布が捨てられるなんて考えられない」と、愛情を持って布とプロダクトと向き合っている。

CALICOの商品を身につけることは、時間をかけて育まれたインドの布文化の伝統を纏うこと。ファストファッションの文化とは対極にある、持続可能なライフスタイルを提案する。

インドのアトリエ(時々アトリエにてオープンデイを開催)では、CALICOの商品の他にもコラボレーションしているブランドや、活動の志を共にするブランドの商品を取り扱っている。

主な取り扱いブランド
CALICO
Ganga Maki Textile Studio
MAKU TEXTILE

ベンガル地方の村で作られる、めずらしい綾織のデニムカディ生地のボトムなど、男女どちらでも着られるアイテムもある。

Address
CALICO : the Atelier OPEN DAY(アトリエオープンデイは不定期に開催。詳細はFacebookページにて)

インドの手仕事の宝庫「カッチの布」展

インドで製品を作り、主に日本で展示会を行う傍ら、インドの布文化を紹介する活動も広く進めている。
CALICOの企画・コーディネートで実現したインドの手仕事の宝庫「カッチの布」展が、2018年の6月13日から18日に、阪急うめだギャラリーで行われた。

アトリエにて。カッチ地方の刺繍が施された、アンティークの子供用ベスト。
アトリエにて。ミラー刺繍が施されているアンティークのカッチ布。

カッチ地方は、白い塩の砂漠で有名な西インド・グジャラート州の街。世界的に評価の高いカッチ刺繍や手工芸の盛んなテキスタイルの街でもある。

史恵さんは、インドの独特な色使いに対して、「砂漠というところは行ってみると色が使いたくなるのがわかる。カラフルな色使いに負けないくらい個性的な大阪の人々には、受け入れてもらえるのでは?と思います。」と話す。

今回、インドの手仕事の宝庫「カッチの布」展では、美しい布文化を体験できる機会として、現地から職人さん、NGO関係者を招いての刺繍や染めのワークショップなども行われたようだ。

日本各地で行われているCALICOの展示は、公式ページ EVENTSやCALICOのFacebook Pageなどで随時告知している。ぜひ、足を運んでみてほしい。

写真・文=小林洋子