マーシャルアーツ/Martial Arts(武術)の一つであり、ケララ州北部を発祥とするカラリパヤット/Kalarippayat。テイヤムの担い手は、幼少期よりカラリパヤットの訓練を受けているという。カラリパヤットは、地元ケララだけでなく、近年では海外でもダンサーや演劇を志す人々にとって魅力的な身体修練法として人気があり、アーユルヴェーダ医学と共通点も多い。

道すがら、念願のココナツを発酵した地酒トディ/Toddyを初めていただく。素朴な掘建て小屋に看板がついただけのトディショップは昨日は通りかかったのに気づかなかった。今日の朝穫れの新鮮なトディは少しクセがある味だが美味しい。案内してくれた地元の人気料理店のマスターは、昼からポカリスェットのようにごくごくと飲んだ。

夜は、Payyanur地区、村の寺院でのテイヤム。
プラサードを寺院の脇の大きな広場で、村の人々と一緒にいただけることになった。大きな鍋でつくるインド料理。この日は2,000人以上が食したという。ミールスはバナナの葉を敷き、葉の上でいただくケララスタイル。ぱらぱら軽くてふんわり丸々とした白米、豆のカレーと野菜のサブジにマンゴーピックル。

それにしてもケララの人は穏やかな人が多い。マラヤーラムで挨拶すると、誰もが満面の笑みでウェルカムを表現してくれた。地元の重要な儀式であるが、私たちのような外国人でも前の席で見るよう促してくれるような寛容さに心底嬉しくなる。子供達は好奇心旺盛で、学校で覚えたての英語を試すべく、ひっきりなしに話しかけてくれる。
寺院では、緩やかな合いの手のような太鼓の音と、語り手の声によって、神話が長く、歌うように語られる。この日の”Kathivanoor Veeran Theyyam”は英雄神話である。武術の優れた使い手であった英雄をテイヤッカーランが演じる。

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手前の祭壇は妻のチェマラシーを表しているとのこと。演目中に何度も見つめたり祈ったりしている。

Story
のちにKathivanoor Veeranとして祀られる英雄、Mannappanの悲しい旅物語。
カヌール/Kannurの小さな村に産まれたマンナパン/Mannappanは、少年期から武術に優れ、成長しながら学んでいった。青年期の生活。友人達との狩猟とトディの飲酒などで父親の怒りを買い、家を追放される。山を越えて叔父のいるクールグ/Coorgへ移る。農業に打ち込むようになり、美しい女性チェマラシー/Chemmarathyと結婚する。仲良く暮らしていたが、ある日、彼女の誤解で喧嘩した。
翌日、戦争が始まった。勇敢に戦い、敵は逃げ、道を進んでいったが、マンナパンは指を負傷した際に指輪も失くしたことに気づいた。それは妻との愛と彼の誇りのしるしだった。1人戻るが、隠れていた敵に囲まれ、卑怯なやり方により、最後には戦死する。妻は、マンナパンが指輪のために戻った事を知り、葬儀の火の中に飛び込んだ。親類らは啓示を受けて、彼は神となった。

そして、いよいよ深夜、神話のストーリーが盛り上がってきた頃。打楽器の部隊がドラムをさらに強く叩く。お爺さんの吹く小さなトランペットがいい音を出している。頭部に更なる装飾を施し終えたテイヤムは、戦士の鋭い顔つきそのもので、リズムを足で刻み、高く飛び、何度も宙に舞う。

体を捻って回転し、脚の軌跡が大きい弧を描く。彼は気高く威風堂々としていた。そこにいる誰もが、彼の高い身体能力から繰り出すアクロバットな動きに魅入っていた。これは、伝統儀礼でありながら、めったに見られない身体芸術であった。

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クライマックスでは剣と盾、鉄の鞭を使った力強いパフォーマンスに息を吞む

Guide
1.
Payyanur (Edat / Kunhimangalam)
Kathivanoor Veeran Theyyam
11th Mar, 2017

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